内容証明と訴訟

大雑把に内容証明を分けると、

  • (1) 訴訟を起こすために内容証明郵便で予告する場合と、
  • (2) 訴訟を避けるために内容証明郵便で説得する場合

があると言ってよいかもしれません。もちろん他にもあります。(1) は弁護士の担当で、(2) が行政書士の担当のように分けてみましたが、弁護士業務も幅広いですし行政書士の業務も幅が広いです。ただ、できることなら穏便に済ませたいというのが行政書士の(少なくとも彩行政書士事務所の)方針ですし、依頼人の希望であることは間違いないでしょう。

こんな疑問も

敷金返還請求について、ネット上で次のような質問と回答がありました。

『ある無料相談で、敷金返還請求には内容証明郵便を利用するのがよいと勧められた。しかし、内容証明郵便を依頼すると、料金は前払いとして3万円、そして取り返した敷金の30パーセントが報酬とのこと。敷金が20万円戻ってくるとしても、取り戻す費用が6万円というのは高くはないだろうか?』

以上のような質問で、これについて、

内容証明を送っただけでは敷金を返してくれないんじゃない? 重要なのは、送った後の訴訟でしょう。』

という回答(アドバイス?)がありました。

おそらく、相談をしに弁護士事務所へ行ったのではないでしょうか?
弁護士は、サラリーマンの社会では「中堅」といわれるような年齢になるまで、法知識と実務訓練を受けた「法律業務のスーパースター」です。報酬額が高くて当然です。

運動会で転んで足を擦りむいたからといって、大学病院の有名外科医のところへ連れて行くようなものです。やっていけないわけではないですが、普通の人はそういうことはしません。擦り傷で、いちいち有名外科医に診察してもらっていたら、本当に高度な外科手術を必要としている人に迷惑がかかります。

次に、アドバイスの方ですが、原則的に考えると、内容証明を送っただけで敷金は返ってくるのです。
内容証明で、この事案では裁判をしても△△の理由で、「敷金を返還せよ」という判決が出ることは明らかなので敷金返還をしてください、と説明するから敷金が戻ってくるという原理です。

そして、どうしても敷金は返還しない、裁判をしてでも返さない、というなら受けて立ってください。しかし、時間と費用がとんでもなくかかるので、普通はお互いに法的措置(裁判)にはなりません。

ただ、別の考え方をする人もいます。金額的に赤字(金銭の損得のことだけを考えれば、かえって損をするケース)の場合でも、どうしても裁判をしたいという人もいます。(金銭的に余裕のある人に多いことかもしれません。) もちろん、それが良くないことだとは思いません。きちんと白黒をつけることも重要なことです。

 

ネット上でこの質問をした人は敷金返還請求をあきらめたのかという印象を受けましたが、どうなのでしょう?

いろいろな「アドバイス」がありますから、十分に考えてください。「行政書士事務所を2・3箇所、弁護士事務所を2・3箇所あたってみて、もっとも良さそうなところを選びなさい。」というアドバイスを受けたという人もいますが、そのアドバイスをした人はこのようなことに本当に詳しいのでしょうか。

現在の敷金返還

敷金返還請求の例を示しましたが、平成29年5月26日、「民法の一部を改正する法律案」が可決成立しましたので、もう敷金返還をめぐるトラブルはほとんどないと思います。

法律が改正されるほどということは、それ以前に大きな問題になっていたということです。日本中で問題になっていたので、国土交通省がかなり詳細なガイドラインを示して、敷金の返還に関しては、管理会社も家主も賃借人もか理解できたので、かなり前から問題は沈静化していました。そしてさらに民法改正ですから、もう問題はないと思います。

気をつけたほうがよいのは、契約時の特約などでしょう。

内容証明の業務の後・・・

行政書士に限らないでしょうが、自分のやった業務で、その後結局どうなったのかということは結構気になります。

あの事情では、内容証明でも訴訟でも完全にうまくいくことは難しいだろうという事案もあるのですが、後日、機会があって尋ねてみると、「送ってもらった内容証明だけで、すぐに希望どおりになりましたよ」と言われて、正直なところ、こちらが驚いたこともあります。
やはりやってみないとわからないものです。(もちろん、いつもそのようにうまく行くわけではありませんが。)

病気や怪我で医師に治療してもらっても、また元のように健康になったら、たいていは医師に報告しに行きませんが、それと似たようなことかもしれません。うまくいったときには、それで満足して、平穏な生活に戻ったのだと考えてもよいのかもしれません。何かの折に、元気になったことを知らせてもらえれば嬉しいです。
また、もし解決していないのなら、次の方法を考えたり、弁護士事務所を紹介できるかもしれませんので、ご連絡いただければ対処いたします。

 

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